「坂本龍一さんに聞く ネット時代の音楽表現とは」

okapia2008-12-21

非常に含蓄のあるインタビュー。
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY200812180219.html
(魚拓:http://s02.megalodon.jp/2008-1219-0604-22/www.asahi.com/showbiz/music/TKY200812180219.html

著作権以前の時代に戻った」という言葉が最も印象的。
特定の高級貴族が個人的に大パトロンとなるモーツァルトの頃のような時代とは異なり、不特定多数無限大の人々がウェブを通じてダイレクトに支持を送る仕組みになっていく。ウェブを通じて前評判以上の献金・支持を集めたオバマ次期大統領の当選とも、「成功」の構造は同じ。

ただし、坂本龍一は「結局はぼく自身の体にしかよりどころはない。自分の耳がどんなメロディーを聴きたいか。それを突き詰めていく」と述べる。それは「個」であり「孤」である、厳しくも清々しい創作姿勢。
「売れるから創る」ではなく、「自分のために創ったものが結果的に大衆に売れる可能性もある」。売れる仕組みは(大企業の手から離れつつあるという意味で)民主的に開かれ始めている。結果として、素人も有名人も力ずくでフラットな世界へと還される。

――ネットに期待をしてきた?

 「ネットは一種の民主化を起こした。それはよいことだと思っています。かつては、多額の投資をして工場を運営する一部の人や企業しか音楽の複製と頒布ができなかったが、この独占が崩れた。ネットの登場で、工場もお店もいらなくなった。質を劣化させずに、大量複製ができるようになった。誰でも曲を発表し流通させることができる。プロとアマチュアの境目はなくなりつつある。マイスペースなどネット空間では素人も有名人もフラットに扱われる」

 「『著作権』以前の時代に戻った感じだ。考えてみれば、著作権という制度で音楽が守られていたのはたかだか100年余りの話。著作権は作り手を守るための権利として生まれたと思っていたが、おおもとは、出版・印刷業者を保護する制度だった。そんな業者たちがあげる利潤のおこぼれで、作曲家が守られてきたともいえる」

――50年後、100年後の音楽はどうなると思いますか?

 「CDが完全に消えるとは思わない。人間には、触ることのできるものを持っておきたい欲望がある。ぼくもネット経由で大量にダウンロードする一方、手元に残したい曲はレコードやCDで買う。最近はアナログ版のレコードが売れて、よいビジネスになっている。500部限定の現代詩の詩集と同様、CDやレコードも希少性が強みだ。ぼくも、バッハらの30巻の豪華な全集を作っている」


世の中やっぱりおもしろくなってきた。梅田望夫の本も読み返す。

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