地球一粒

月周回衛星「かぐや」から撮影された地球。
藍と白の球体が漆黒に零れる。
 
 



 
 
地球はなぜ美しいのだろう。
 
なぜ人間は、地球を美しいと感じるのだろう?
地球が人間にとって住みやすい環境だから?
だとすれば、南極の雪景色や灼熱の砂漠に霊妙な魅力を感じる者はいない。
 
人間の故郷、海原を想起するから?
そんなに帰りたければ、今からでも遅くない。
とっととひらり飛び込めばいい。
 
見上げる空が青いのは、光がちりに反射するから。
広がる海が青いのは、海が青空のスクリーンになるから。
月から見た地球が青いのは、地球に大きな海があるから。
 
<環境を守ろう!>の「環境」は、往々にして「人間の住みやすい『環境』」だ。
百歩譲って、「地球上に現存する生物にとって住みやすい『環境』」だ。
温暖化したって寒冷化したって、それで住みよくなる生物は必ず存在する。極寒が大好きな生物もいれば、深海に生きる生物もいる。地球自身が体温を上げたいか下げたいかなんて、誰にも断言できやしない。たとえ地球が滅びたって、どこかの妙ちきりんな宇宙生物や未知の物質が地球爆発の拍子に「得」をするかもしれない。
 
月の大地が寂しそうなのは人間の都合。誰かに勝手に恋い焦がれているだけ。
本当に孤独なものは、誰も探さない。どこにも孤独を見出さない。
孤独と思う時点で、人は孤独に成れていない。
何かを求めている。誰かと寄り添っている。
 
美しいと感じる理由が欲しくて、ここに存在する必然が欲しくて、必然が欲しい理由が欲しくて、人は何かを眺める。
 
くっつきたいんだ。包まれている保証が欲しいんだ。