未来の幸せをイメージ

okapia2009-04-22

『Cam with me』
http://www.sony.jp/products/Consumer/handycam/camwithme/main.html
ソニーハンディカムのスペシャルサイト。赤ちゃんから結婚まで愛娘が生まれ育ってゆく様子を擬似的に記録し、自分だけのムービーを作れる。
 
これはすごいなぁ。ビデオカメラを買った後のずっと先の幸せまでイメージさせてくれる体験的広告。商品の性能より何より、心の琴線にグッとくるというか…訴えかけるものがある。泣ける。
…男親の方が、いろいろ思うところがありそうではある。
 
これを見てすぐに思い出したのは、この記事。
 

http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20080611/161788/

「いいですか、人気のデジカメ。今日のはなんと700万画素なんです。700万画素だと、写真を、ほらここにある新聞紙(手に新聞紙を広げる)一面の大きさに引き伸ばしても、このように(今度は同じ大きさに引き伸ばした写真に持ち替え)写真のきめが粗くなりませんね。サービス版の画質と変わらないでしょ。どうです。こんなに大きくしても、くっきりはっきり画質が落ちないんです。この700万画素のデジカメで、お子さんやお孫さんの写真を、例えば誕生日ごとにとっておいて、20歳の成人式の日にこの新聞紙の大きさの成長記録集としてプレゼントしたら、びっくりしますよ。
 『お母さんありがとう』
 『おばあちゃんありがとう』
 振り袖姿のお嬢ちゃん、泣いて喜んでくれるんじゃないですか。700万画素だからできるんです。写真が大きいから感動も大きいんです」

 こりゃあもう、名人芸。目の前の幸せばかりか、10年、20年先の幸せのイメージまで伝えてしまう。

 「いいなあ、その700万なんとかとかいうカメラ。びっくりさせてやろうよ」
 「毎年の誕生日も楽しくなりそうね」

 画素の意味はよくはわからないけど、子供や孫の人生とのかかわりがより親密なものになると感じられることは、そのまま幸せを手に入れることにつながりそうだ。

「大型液晶テレビ。画面が大きいんです。画面が大きいと、家族みんなで見られるんです。皆さん! これまで小さなテレビを別々の部屋で見ていませんでしたか? この大画面液晶テレビ! 大きいですから居間に置きますね。くっきりはっきり大型、大画面液晶(高田社長はあえて同じ言葉を何度も繰り返すのが特徴)。家族みんなで見たいですね。お父さんも、お母さんも、お子さんたちも、おじいちゃんも、おばあちゃんも。どうです。家族が一つになって、1つの液晶大画面を見る。昔みたいな家族だんらんが戻ってくるんです」

 高田社長は、商品の性能を細かく説明するより、その商品を購入することで、一家にどんな幸せが訪れるかをイメージさせることに心を砕くのが常だ。

 「家族だんらんかあ。懐かしいなあ。ばあさん、わしの年金の積み立てで買ってもいいかなあ」

 
「さんまのまんま」に高田社長が出演した時にも、件のデジカメの話をしていた。
話を聞いて、すごーくわくわくした。あの情感あふれるプレゼンにはそんな秘密があったのか。一般的な通販番組は決して好きではないけど、「ジャパネットたかた」だけは何となしに見てしまう。その理由がよく理解できた。
最終的にはどうせ営利だろ、といえばもちろんそうかもしれない。それでも、買った人が心底ハッピーになれるならいいじゃないか。注文した商品をまだかまだかと待ちわびて、その間、未来の幸せをぼんやりとイメージし始める。商品との今回の出会いがまるで何かの運命だった気さえしてくる。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20090430/150233/

人間は生まれたら、絶対に死んでいく。自分が一生のうちに出会った人とどれだけこの幸せを共有して生きるかが、人間にとって一番大事な部分ではないか。商品が100台売れた、1000台売れたという世界ではなく、その商品を通してどれだけの幸せや感動を人に与えていくかの方が大事なんじゃないかと自然に思えるようになってきた。だから「その商品を何のために買うんですか」ということを伝えたい。そんな思いがあります。

人は、「商品が良いから」買うんではなくて、「商品を手にしたハッピーな未来をイメージできるから」欲しくなる。性能や機能なんて、幸せの小さな付属品に過ぎない。気づけば本当に簡単なことなのに、どうしてわからなくなるんだろう。
 
自分も、誰かに未来や希望を「具体的に」イメージしてもらえるようなメッセージの伝え方をしたいものだ。