『大学図鑑!』オバタカズユキ

社会の切り口としての大学案内。
大学図鑑!2008
大学入試の参考書コーナーに立ち寄られた経験のある方は、この本をどこかで目にされているかも知れません。2008年度版は全国115校を中心に掲載。各大学ごとに、かなり主観的で具体的な本音の取材がなされています。公式の大学パンフレットやオープンキャンパスなどは、いわゆる「よそ行き」の大学なわけで、知り合いに志望校在学者がいない受験生にとっては、素顔の大学を知ることができる有用な手段になるでしょう。
調査内容は、学生気質・評判・環境・周辺情報・授業の様子・学生生活・就職等、多岐に渡ります。
自分が所属している大学に関しては、8割方は正しいという印象。「知り合いの意見」も、どうせ主観的で偏ったものになるでしょうから、大方合っているなら十分に貴重な情報源です。
この本では、偏差値・立地・学費・カリキュラムなどをそっくり全部ひっくるめた形で、世間からの「イメージ」に特に注目しています。偏差値が低くても評価は高い、またその逆の例も数多く載っています。自慢の母校が辛らつに評価されていて、ムカムカくる方も多いかもしれません。
大学は社会に開かれた学問の場ではありますが、そういった「イメージ」によって受験者が集まってくるなら、必然的に「イメージ」通りの学生が育ちやすいというわけです。「どの大学も似たような人間が多くなった」とは言われるものの、実際何年か大学という場にいると、同じようになってきたからこそ、ちょっとした空気の違いが分かるようになってきたりします。8割の学生が類似していても、2割が独特なら空気は変わる。やっぱり、大学によっての学生の雰囲気やカラーは、場所によって全然違うなと感じています。
自分は、大学が全てとはこれっぽっちも考えていません。けれど、何千人何万人が一つの場所で数年過ごすことで生まれる独特の社会集団は、見ていてなかなか面白い。
しかも、地元の中学や高校よりも比較的広く世間に知られているから、初対面の方はどうしても相手を○○大のカテゴリーで見てしまいがちです。じゃあ、自分はどんな風に思われているのだろう、あの人は本当にカテゴリー通りの考え方をしているのか?…などなど、大学に関わりが無くても、主観的な観点から大学を知ることで、自分や相手のことを逆に客観化して見られるようになれるかもしれません。
これは、「○○人だから…」というような、国別に言われるステレオタイプと似ています。ドイツ人だから几帳面、スペイン人だから酒が強い…とか。「△型だから…」なんていう血液型占いも、形は同じようなものです。それを理由に距離を置くのではなく、相手を知るための取っ掛かりとして興味深いものだと自分は思っています。社会の中にそんなカテゴリー分けがあるのなら、一般的な「イメージ」を知っておいて決して損は無いです。
肩書き、職業、性別、年齢、人種、国籍、出身、外見、振る舞い、服装、声、髪の色…全部!
自分は、自分がどう見られているかということを踏まえて、次の手を考えたい。「○○だから大丈夫(or心配)」なんて単純な結論で終わるつもりはありません。「どうせ○○かもしれないから、じゃあ自分は△△から攻め落とそう」の方がずっと現実的で楽観的です。
受験生、大学生、卒業生、大学と関わりのなかった方、誰でも好きなように読めます。本音の大学案内、あるいは一種の占い本みたいな感じで、気軽に手にされると良いかと思います。
 
大学図鑑!2008
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