『口語訳 古事記』三浦佑之

日本のつくりかた。
口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)口語訳 古事記―人代篇 (文春文庫)古事記講義 (文春文庫)
非常に読みやすい『古事記』です。『古事記』はもともと、語り部のおじいさんが周りに昔話を語り聞かせている設定なのですが、「〜じゃった。」「〜しての、」「〜なのかのぅ。」のように、柔らかい語りで現代語訳されています。声に出して読んでも雰囲気のある、軽妙で親しみやすい語り口。
記紀」と呼ばれる『日本書紀』と『古事記』ですが、どちらも同じく日本の成り立ちを扱っているのに、論理立てが微妙に違います。天皇家の扱いでも若干の変化がありますし、神様たちの関係にも少し違いがあります。また、『日本書紀』は日本の正史として編さんされましたから、淡々として機械的な文章が多いです。『古事記』の方がドラマが分かりやすいし政治的な色(天皇家の強調)も少ないので、ここではまず『古事記』を紹介しておきます。
読むならまず、日本神話を生き生きと伝える『口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)』。神様たくさん。日本文化の底流が発見できて、すごくおもしろいです!神様の系図も巻末に付いているので、誰が誰の子かわかりやすい。解説を抜かせば結構短いストーリー(150ページ程度?)なので、気軽に読んでみてください。
これを読んでさらに興味がわいた方には、天皇家と臣下を中心とした人物ドラマである『口語訳 古事記―人代篇 (文春文庫)』を。少し厚いです。
もっと深く勉強したい方は、2冊読んだ後に『古事記講義 (文春文庫)』へ進んでみてください。
3冊とも文庫本なので、肩の力を抜いて読めます〜。
 
聖書なんかも、経典として読まなくてもストーリーは十分にドラマ立っています。
聖書だけでなくコーランもそうだと思うのですが、内容を信じる信じないを別として、その国に住む人々の根っこの部分の判断基準や考え方の道筋は、昔からあまり変わらないのかもしれません。それが「偏って」いたって仕方がない。それを「宗教」と呼ぶか、「文化」と呼ぶか、他の呼び方をするかは見る人の見方による。
論理的といえばどの国だって論理的。でも、論理の組み立て方は、どの国の人もすごく人間的。政治、宗教、思想、教育、文学、歴史…、全部繋がっています。最終的な対象は全部、人間。
ちょっと文化人類学的な立場になり過ぎてしまいますが、だから何も話が進まないとは考えていません。「偏って」いることを前提として、あとは互いの根っこの違いを何で埋めて理解し合ってていくか、ですよね。国内でも国外でも、人間や社会の問題はずっと変わらないー。
 
日本を知るというより、日本という場に生きる人間を深く知るためにお薦めします。
 
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