『独立するべ バーチャル国あきた』

okapia2008-01-30

『独立するべ バーチャル国あきた』
http://www.sakigake.jp/p/special/08/virtual01/virtual-prologue1.jsp

[scene5]日本から分離、船出

 若杉知事にとって、独立構想は思いつきなどではなかった。若杉は2年前にあの「最悪の初夢」を見た直後、県庁内に極秘の「秋田独立検討チーム」を発足させ、学者も交えて議論を重ねていた。その答申は「誠実かつしたたかな外交、自発的な産業振興、国民の相互扶助システムの確立などにより、個性的なミニ国家として独立可能」だった。

 年明け、若杉は独立の賛否を問う県民投票を7月に実施することを明らかにした。県民の間では賛否をめぐって集会やデモが頻発。反対派が秋田市八橋運動公園で開いた集会には3万人が参加、近くの県庁への投石騒動まで起きた。若杉は県内を3巡、集落の隅々まで顔を出して独立への支持を訴えた。マスコミの世論調査でも賛否は真っ二つに分かれた。

 県民投票が迫った6月下旬。秋田新聞の田畑記者は、全県を行脚していた若杉が久々に公舎に戻ったことを知り、夜回りをかけた。若杉は疲れた表情で「田畑君、賛成が上回ると信じたい。秋田の名誉にかけてもだ」。田畑は返した。「『秋田の名誉』? 知事自身の名誉でしょう」

 若杉は躊躇(ちゅうちょ)しながら、田畑に永田首相の言葉を伝えた。「秋田は貧乏県でお荷物」「勝手に独立でもしろ」。若杉は「秋田はこれほど蔑視されている。独立しても幸せに暮らせることを見せたいんだ」と、「名誉」の意味を説いた。秋田を発展させたい一心で故郷の新聞記者になった田畑も、永田の言葉に怒りを禁じ得なかった。

 迎えた県民投票。投票率は90%を超えた。賛成は52%。辛うじてではあるが、過半数となった。新国会議員選挙は県議選と同じ選挙区で行われ、新人6人を含む国会議員40人が誕生。5人が出馬した大統領選挙では若杉が圧勝、初代大統領に選ばれた。

 秋田が日本から分離、独立したニュースは世界中を駆け巡った。若杉と旧知の仲であるソレイユ島共和国大統領もエールを送り、早速、「ミニ国家平和連合」への加盟を促した。

 「これからが正念場だ」。組閣を終えた若杉は、旧知事公舎―今や大統領公邸―で国づくりに向け英気を養った。

 
――秋田は独立国家になります。
元日に届いた新聞にはそう書いてあった。
 
もちろん架空の話。しかしながら、冗談じゃないくらいに気合いの入った記事。
1874年創刊、犬養毅主筆も務めた、秋田県でシェア6割超の『秋田魁新報(あきたさきがけしんぽう)<さきがけ新聞>』。そのさきがけが狂ったのか。さも当然のように紹介されて行く、秋田国国家プロジェクトに関する記事の数々。衝撃の中で、笑いながら、でもわくわくしながら真剣に記事を読んだ。
 
さきがけ新聞は、秋田県民の意識改革を求めている。政府や都会の動きに惑わされるがままの秋田県に、変化を迫っている。一つ一つの記事は冗談のように見えても、企画の背景に流れる危機感は大きい。
秋田には底力があるはずなのに、自信が無い。攻めない。発言しない。
 
こうした意識改革の問題は地方全体に言えるものだろう。
要は意識意識意識!そして地域にある資源をいかに経営し、有効な社会システムを構築していくか。
 
意識と行動。
補助金行政に安住して、意識改革と社会行動に踏み込めない地方や地域は衰退するのみ。
地方の危機感がひしひしと伝わってくる。
 
「食料自給率が、秋田県は全都道府県の中で第2位なんですよ!」
正月のテレビ番組で寺田典城秋田県知事が訴えていた。
 
どの記事も地域経営の視点を貫いていて、本当に興味深い。
 
たとえば、

http://www.sakigake.jp/p/special/08/virtual01/virtual01_05.jsp
家電製品からレアメタルを再精錬する技術において、秋田県は群を抜いている。
最近では、

【 2008年1月15日 日本は希少金属の資源国 】

日本は、金、銀、鉛、インジウムの最大の資源国で、銅、白金、タンタルも3位以内の資源国に相当する−。物質・材料研究機構は、多くの日本人にとっては想定外とも思われるデータを公表した。

データは、国内に蓄積されリサイクルの対象となる金属の量を算定したものだ。東北大学選鉱精錬研究所の南條道夫教授らによって提唱された「都市鉱山」というリサイクル概念に基づいている。公表された数値は、希少金属の大消費国である日本は、リサイクル可能なそれら希少金属の資源国でもある現実を具体的に示している。

算定結果によると、金は、約6,800トンと世界の現有埋蔵量42,000トンの約16%にも上り、最も埋蔵量の多い南アフリカをしのいでいた。銀も、60,000トンと23%を占め、ポーランドを超えて一位。液晶ディスプレーや発光ダイオードなどの原材料として、需要の逼迫と資源枯渇が心配されている希少金属インジウムに至っては、世界の埋蔵量の38%が都市鉱山として国内に存在するという結果になっている。

これらが経済的に見合う形で利用できるかが問題だが、物質・材料研究機構は、都市鉱山資源を都市鉱石としてより積極的に有効活用していくことが必要である、としており、有効活用のシステム作りは、今後の課題として残されていることを示している。同機構は、これら国内の都市鉱山資源が、使用済み製品の「廃棄物処理」と抱き合わせの形で、本来の価値より安く国外に放出されている現状も指摘している。

といった記事にもあるように、都市鉱山の大きな可能性が指摘されている。
 
また、

  • イクベガス カジノ隆盛 議論呼ぶ

http://www.sakigake.jp/p/special/08/virtual01/virtual02_05.jsp
など、改革の功罪のシミュレーションにも意義がある。
 
どんなに荒唐無稽な話だとしても、今まで「意識」のカケラを持たなかった県民たちにストーリーを見せ、未来を魅せていくことが重要だと思う。
実現可能か?それを考えるのは今は無意味。
実現したらこうなる!という選択肢を少しでも多くつくり上げていく。
それができなければ、未来には人口的経済的社会的な「衰退」しか残らないだろう。
 
プロパガンダ結構。何もせずに時間切れ、選択肢も無く終了、よりずっといい。
何かを反論があれば、さきがけに反対投書をすればいい。
記事に紹介されているこれらプランを実現することが目的なのではなく、静まり返っている県民の心に火をつけることが企画の目指すところであろう。火がつけば山が燃え、住民が騒ぎ、消防隊が結成される。焼き芋でも焼き始める人がいるかもしれない。誰かが風呂屋を開くかもしれない。雪舞う秋田は火事でてんやわんやの盛り上がり。そうなれば、この企画は大成功である。
 
秋田魁新報』の前身は、事実の客観報道と政策議論の喚起に在野で燃えていた『遐邇新聞(かじしんぶん)』。
明治の新聞かくありや。
自分は、さきがけのこの企画に大いに勇気づけられた。応援したい。