『ウェブ人間論』 梅田望夫 平野啓一郎

せっかく「はてな」で書くんだから、「はてな」の取締役梅田望夫の著書から。
ウェブ人間論 (新潮新書)
猛烈な速さで進化するウェブ世界を通じて「リンク」された現代人は、肉体的に単一の身体の中に納まらない。生きて行く上で必要とされる情報・能力を、自らの中に無理やり詰め込んでおく時代は終わった。これからは人間能力増強装置の役割を果たすネットを駆使し、どのように情報を得、どのような人脈を手繰り寄せて行くのかが勝負の大きな分かれ目となる。天から与えられた家族・友人・居住地など、絶対とされてきた個人のアイデンティティでさえも揺らぐ新世界で、人間はどのようにサバイブして行けばよいのか。何気ない日常が、社会変化の大波の只中であることを実感できる良書だった。
対談形式のため、何か一貫した訴えがある類の本ではない。もちろん、この本だけでもウェブ世界の可能性の片鱗を覗くことはできる。むしろ、ITに疎い者には『ウェブ人間論』の方が易しい。しかし、可能であれば梅田の前著『ウェブ進化論』を先に読むのが望ましいだろう。『ウェブ進化論』のシャワーを浴びたあとであれば、『ウェブ人間論』を読み進めながら、彼らと卓を囲んで中身の濃い対話ができるはずである。
半端でなく機会均等の社会がやってくる。サバイバルナイフとなる自分の「教養」は、きちんと磨かれているのか。脳は常に生き生きと「リンク」されているのか。身の引き締まる思いがした。
 
ウェブ人間論 (新潮新書)
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