『ハーバードからの贈り物』 デイジー・ウェイドマン(Daisy Wademan)

ハーバード大学ビジネススクール(HBS:http://www.hbs.edu/)の伝統、教授が学期末最後の授業で学生たちへ贈るはなむけの言葉15編を集めた本。
ハーバードからの贈り物 (Harvard business school press)
いわゆる授業の「雑談」である。自分はこの「雑談」が大好きだ。ただ知識を得たいなら、教科書を読めば済むかもしれない。楽しく物事を覚えたいなら、友人と一緒にわいわいやれば良いかもしれない。けれど、教授あるいは講演者その人一人からしか学び取れない貴重なエッセンスが、講義の中には存在する。その人が人生を重ねてきたからこそできる間の取り方や、声の強弱、そして示唆に富んだストーリーがある。授業の本論でも教授の固有性は見え隠れするが、中でも特に人間性が凝縮された一時が「雑談」の時間であり、聞いていて本当にわくわくする。
もちろん、話の内容は賛成しかねるものであったり、つまらないものかもしれない。けれど、その時間でしか浴びることのできないオーラのようなものがあると思う。そう考えれば、去年と今年で講演者が同じトピックで話していても、二つは全く違ったものだ。講演者がいろんなことを思い考えながら過ごした年月、経験の量が明らかに違うからだ。そこにライブ感を感じられれば、どんな話からも得られる影響が必ずあると思う。
この本では、MBAを取って企業のリーダーになっていく人間向けへ贈った話が載せられているが、決して大企業のトップのみに当てはまる話でない。老若男女誰でも考えさせられる人生観がたくさん詰まっている。ビジネスの知識がほとんど無い自分にも易しい話ばかりであった。何より、彼らは「伝えよう」としている。小難しい話で困らせようとなどしていない。暖かい雰囲気が本の最後まで続いている。
特に「ラシュモア山での問い」が印象に残った。「あなたが相手に何を言うかではなく、あなたが話しているときに、相手の内面に何が生じるかが最も重要」「成功の尺度は、自分自身が得た勲章ではなく、周囲の人々の生活にもたらした影響と変化に置くべきなのだ」といった信念は、経営者だけでなく、誰もが持つべき深い視点だろう。
彼らは、「彼らの人生」を真剣に語ってくれる。教室の最前列で、教授たちと目を合わせているような心持ちで読み進めると更に楽しめると思う。
 
ハーバードからの贈り物 (Harvard business school press)
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