『こどもの詩』 川崎洋

天気はあしたのおたのしみ。
こどもの詩 (文春新書)
大好きでした。実家では新聞を数紙購読していましたが、読売新聞を読むときには「こどもの詩」コーナーに必ず目を通していました。川崎洋さんは同コーナーで、22年間、投稿詩の選評をしていました。「選評」というと言葉がきついかもしれません。作品をあちこちつついてこき下ろすのではなく、詩に託された子どもの世界を原作以上に大きく大きく広げてくれるあったかいコメントが魅力でした。川崎さんは、自分が大学に入った年(2004年)にお亡くなりになりました。ネットで訃報記事を見つけ、どうしてももう一度読みたくなってこの本を探したのを覚えています。
投稿者は小さな子が多いので、詩には大人が手を加えているところもあるのかもしれません。それでも、世界を見つめる鋭い着眼点やまなざしにとても驚かされます。彼らは本当に同じ世界に住んでいるのだろうか、毎日生きていても自分はこんな小さなに光に気づけるだろうか、何度も何度も省みさせてくれます。
子どもたちの詩、それ自体もみずみずしい世界観で素敵な作品がたくさんなのですが、この本を読むときには川崎さんのコメントにもぜひ注目してみてください。ほんの10〜40字くらいの文章で、子どもたちをお日様のように見守っています。子どもの受け止め方を知っている、豊かな世界観を子どもと共有できている人です。
本物の批評家は、作品を生かす批評をしなければならないと思います。作者の世界観、あるいは創り上げた遊園地を壊すような真似はしてはいけない。その作品に少しでも触れたのなら、作品の中で一緒にお茶しながら談笑しあうぐらいの気概を持つべきです。それが読んだ人間の責任。勝手に他人の世界をいじくりまわすのは、悪質なピンポンダッシュみたいなもの。友人が淹れてくれたあったかいコーヒーのお茶うけに、おいしいお菓子をそっと添えられるような人になりたい。
 
こどもの詩 (文春新書)
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