『文章は接続詞で決まる』石黒圭

接続詞の論理は、論理のための論理ではなく、人のための論理なのです(cf.p33)。

文章は接続詞で決まる (光文社新書)

文章は接続詞で決まる (光文社新書)

 
幼児が習得する品詞の中で最も遅いものが接続詞である。一文の構造と直接関わらない周辺的な品詞であるがゆえに、動詞や助詞と比べて論理が見えにくく、わかりにくい(p.16)。
しかし、私たちは接続詞を身につけなくてはならない。文章の全体構造を支えるのは接続詞だからである。
この本を読めば、接続詞の重要性をひしひしと実感することになるだろう。
 
以下の定義をよく見比べれば、それが自ずと明らかになる。

接続詞の一般的な定義
接続詞とは、文頭にあって、直前の文と、接続詞を含む文を論理的につなぐ表現である。

接続詞の本書の定義
接続詞とは、独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続文脈の展開の方向性を示す表現である。

 
接続詞は論理的か。答えはノーだと筆者は述べる。

  • 昨日は徹夜をして、今朝の試験に臨んだ。しかし、結果は0点だった。
  • 昨日は徹夜をして、今朝の試験に臨んだ。しかし、結果は100点だった。

二つの例が両者とも成り立ちうるのは、「しかし」以前の「暗黙の了解」が異なるからだ。

接続詞で問われているのは、命題どうしの関係に内在する論理ではありません。命題どうしの関係を書き手がどう意識し、読み手がそれをどう理解するのかという解釈の論理です。

(p.31-32)

つまり、接続詞は生きているのだ。接続詞は、機械的に同じ回答を出し続ける純粋な記号などではなく、書き手の思いを読み手へと伝え、読み手と書き手が一丸となって文章に命を吹き込む創造的な場所なのである。
 
大学(大学院)受験の小論文や「接続詞を選ばせる問題」に対して自分が長年持っていたあの違和感が一気に氷解。ページをめくる度に頭がすっきりくっきりと整理されてくる。線を引きたいところが多過ぎて本当に困る。
「ことば」や「日本語」が好きな人には一読をものすごーくお勧めする。別に文章なんて書けるし読めてるし…なんて、絶対人生損している。文章を読むのがもっともっと楽しくなる、素晴らしい本!
 

目次
序章 接続詞がよいと文章が映える
第1章 接続詞とは何か
第2章 接続詞の役割
第3章 論理の接続詞
第4章 整理の接続詞
第5章 理解の接続詞
第6章 展開の接続詞
第7章 文末の接続詞
第8章 話し言葉の接続詞
第9章 接続詞のさじ加減
第10章 接続詞の戦略的使用
第11章 接続詞と表現効果

  

接続詞は、前後の文脈の関係を表示するものですが、いつも決まりきったような関係にばかり使うわけではありません。ふだん思いもしないような関係に、意外な接続詞をあえて使うことで、これまでにない新たな発想を開拓できる可能性があります。そうした接続詞の使用に敏感なのは、詩人と呼ばれる人たちです。

(p.44)

 
著者、石黒圭さんのサイト。
『文章研究のホームページ』
http://homepage2.nifty.com/ishigurokei/
 
近頃は「すると」ラブです。発見の接続詞!