『坊っちゃん』夏目漱石

上野駅で『坊っちゃん』を読む。
上野で読もうと特別決めていたわけではなく、上野駅に着いた時にたまたま持っていた文庫本が『坊っちゃん』だった。きちんと一気に通して読んだのは初めてだったかもしれない。

坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)

悲しい。読後感は悲しみでいっぱいだった。
無鉄砲な坊っちゃんを、誰もわかってくれない。誰も自分をわかってくれない!という強い強い孤独感が、坊っちゃんを突き動かし続けている。最後の文章だって、「清が口酸っぱく言うからそうしてやった」(ネタバレしたくないのでアバウトな書き方)としれっと述べながらも、本音はおそらくまったく違う所にある。
勧善懲悪をテーマとした小説と言われているが、水戸黄門のようには決してすっきりとはいかない小説だ(念のために書くと水戸黄門も大好きだ)。反俗や奔放の精神も、救いがあってこそのユーモアだ。執筆当時の夏目漱石の心持ちは如何ばかりかと思いを馳せる。