『ヴェニスの商人』シェイクスピア

借金の担保はお前の肉一ポンド。

ヴェニスの商人 (光文社古典新訳文庫)

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おもしろい!シェイクスピアってこんなにも味わい深い世界なのか。
やはり文体との相性は大きいんでしょうね。翻訳小説、しかも有名な作品となると類書も多くて、最初にどれを手に取るかはその人の人生にとっても非常に重要なこと。
安西徹雄を知って、自分もこれですんなりシェイクスピアの世界に入れる!と喜んだのもつかの間、先生は昨年亡くなってしまったのですね…ショック。
素敵な翻訳をありがとうございました。遺された作品をしっかりと噛みしめて、他のシェイクスピア作品もこれから積極的に楽しみたいと思います。
 
特に印象深い場面は、ほとんどの読者がそうなのかもしれませんが、シャイロックの大立ち回り。

ユダヤ人には、目がないのか。四肢五体も、感覚も、感情も、激情もないというのか。同じ物を食い、同じ刃物で傷つき、同じ病いで苦しみ、同じ手当てで治り、夏は暑いと感じず、冬も寒さを覚えないとでもいうのか。何もかにも、キリスト教徒とそっくり同じではないか。針で突けば、わしらだって血は出るぞ。くすぐられれば、笑いもする。毒を盛られれば、死ぬではないか。それならば、屈辱を加えられれば、どうして復讐をしないでいられる。何であろうと、わしらがあんたらと同じであるなら、復讐することだって違いはない。もし、ユダヤ人がキリスト教徒に辱めを加えたら、キリスト教徒は何をする?右の頬を打たれたら、黙って左の頬を出したりするか?いいや、復讐だ。もし、キリスト教徒がユダヤ人に辱めを加えたら、キリスト教徒は何をする?キリスト教徒の忍従の例に倣って、ただ黙って耐え忍ぶのか?いいや、復讐だ。悪いか?だが、この悪いことを教えてくれたなぁ、他ならぬ、あんたらじゃねえか。わしはただ、その教えを実行するだけ。見ておるがいい。必ず教えられた以上に、立派にやってのけてやるからな。

(p.100-101)

クリスマス・キャロル』の守銭奴スクルージに勝るとも劣らぬキャラ立ちした存在感。

クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)

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ユダヤシャイロックキリスト教徒アントニオ。商業主義。法律万能主義。慈悲?正義?ヴェニスの大公の不気味なほどのかそけさ。
時代背景を考えない解釈は禁じ手…とは思いつつも、昨今の世界情勢や現代社会を想起せずにはいられなくなります。これもまた重層的で玩味すべきシェイクスピアの楽しみ方の一つ?
 
シャイロックにスポットを当てたという

ヴェニスの商人 [DVD]

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も、ぜひ一度観てみたいです。