ブルーモーメント

okapia2007-04-25

昨日紹介した奥井亜紀さんのアルバム(参照:Apr.24, 2007)の中にも曲名として使われている、「ブルーモーメント」。風景写真が好きな方はよくご存知の情景でしょうか。
「ブルーモーメント」とは、字の通り「青の時」。夕焼けから日没に移ったその瞬間、残照が青くにじむように空を染めていくことがあります。生気あふれる昼間の青空ではなく、しっとりとした上品な表情の空。淡いブルーはすぐに暗闇に包まれてしまうけれど、その薄明かりの一時は、昼でも夜でもない特別な時間。
何故そんな現象が起こるのかを正確に伝えるには、太陽の光の中にはもともと青の光も赤の光も入っているという話から始める必要があります。
簡単に言えば、光の中には色という色全て、つまり虹の色が全部入っています。太陽から地上に届く間に、光は大気の分子や空気中のチリとぶつかり合って、四方八方に散乱します。光の中でも、青の光は散乱しやすい。だから、青は他の色よりもずっと強めに出て、昼間の空はだいたい青い空になりやすい、というわけです。けれど、夕方になって太陽の高度が低くなると、太陽光が地上に届くまでの距離がずっと長くなります。すると、青の光は分厚い大気やチリで散乱され過ぎて、地上に届く前に霧消してしまいます。だからその分、昼間は目立たなかった赤みの強い光だけが空に残って、夕焼け空になるというわけです。
じゃあ、どうしてブルーモーメントが起こるのか。
ここでもう少しだけ立ち止まって、夕焼けの上手なつくり方を考えてみましょう。光は、散乱することによって空間に色を広げます。ということは、夕方にちょっと雲のようなものがあれば、光はじんわりと空に広がっていって、何も無い空よりもずっと綺麗な茜空が出来上がります。
それを逆に考えると、雲ひとつ無い空では赤色は広がりにくい、ということになります。すると、快晴の日没の中では、時に主役が交代。もともと活発な青が、あまり散乱せずに空へ空へと広がっていくわけです。澄みきった夕空に、普段届くことの無かった青い影がかすかにこぼれることがある、これが「ブルーモーメント」です。
順を追って逐一説明してしまいましたが、その幻想的な世界は、上に貼った写真を眺めるだけで伝わりますよね。
写真家の吉村和敏さんが、ブルーモーメントを主題に写真展を開いています。日比谷で5/9まで(参照:吉村さんのブログ)。ブルーの夕焼けをぜひ見てみたい!という方は、そちらにも足を運んでみてください。
 
昼間と見まがう青空発見。
もう夕焼けかよと落胆したあの空、
やわくて小さな朝焼けだった。
ふてくされずに見開いた眼前、
のっぺり煌く太陽一つ。
「はずれ」の暗夜に星屑いっぱい。
「もう一回」が選べない!
 
(画像source:Wikipedia ブルーモーメント