「我が意を得たり」

okapia2007-05-06

「我が意を得たり」という言葉を、二十数年間で一度だけ貰ったことがある。もしかすると他にも経験があったのかもしれないが、記憶の中に刻まれているのは、その一言きり。
学校行事の式典で担当した長い挨拶の中に、OBの胸に強く響く文脈があったのだと聞かされた。
「三つある校標の扱いについて全てを同列にせずに、明確に使い分けた上で一つの校標に重きを置いた、この繊細な意識や感覚こそ同校の伝統を如実に体現している。最も大事なものは何か、本校が長く大切にしてきたものは何かを君は理解している。これまさに我が意を得たり、と私は感じた。」

同様の体験を先程した。
正確には、言葉を発したのは自分だったから、逆の体験と言った方が近い。
伝統とか歴史とかそんな大層なものではないけれど、この気持ちは間違っていない。
積み重ねてきたものがあるから、今の一瞬がある。過去は、先の未来に評価されなければ、現在には決して確かな姿を現さない。闇雲の彼方を睨みつけながら、泥に埋もれた足跡は西日混じりに顔を覗かせた。
 
(画像source:http://artworks-photo.sakura.ne.jp/