『日本スポーツ仲裁機構(JSAA)』

okapia2007-08-04

日本スポーツ仲裁機構(JSAA)』
http://www.jsaa.jp/
先月7月6日に認証された日本初のADR機関。
ADRとは「裁判外紛争解決手続き」のことで、一般的な裁判によらない紛争解決を目指す制度です。
裁判を起こすためにはたくさんの手間と時間、多額の費用がかかります。加えて、たとえばスポーツのように、紛争解決に特別の専門知識が求められるような分野では、普通の弁護士や裁判官による適切な判断が困難である場合が発生します。このような裁判制度の欠点を補う役割として、ADR制度に期待が集まっています。
ADR機関は、業界の専門知識を持った信頼できる専門家や、その分野の法知識を持った弁護士などで構成されます。
これまでも国際商事仲裁協会(JCAA)や交通事故紛争処理センターなどの民間のADR機関はいくつかありましたが、この「日本スポーツ仲裁機構(JSAA)」は、政府による認証を受けた最初のADR機関です。
オリンピックも来年に迫ってきましたし、代表選考のいざこざでJSAAが活躍する日も近いかもしれませんね。
 
ADRは原則一審で終了ですので、仲裁の判断に不満が残っても裁判に訴えることはできないことになっています。…とはいえ、交渉決裂の際にはきっと裁判になるでしょう。意見対立が激しい場合や、お互いの相性が悪い場合は逆に冗長になってしまうかも…とは思います。けれど、そうした点を考慮に入れても、多分野に専門知識を持った裁判官が少ない以上、法に限らない判断知識を持った専門家と相談する方がずっと現実的な社会のはず。裁判上の仲裁や和解とは質が違う。完璧な制度とは決して言えないものの、ADR制度本格導入の意義は大きいと個人的には考えています。
 
日本人は形式的な裁判より話し合いが好き。ADR機関も段々と発展していきそうです。専門的制度が社会に乱立して、みんなの価値観も多様化。おまけに国際化。こんな世の中で一国の法律のみで紛争を解決し続けるのはすごく難しいだろうなと思っています。「法学」という学問として突き詰める意味はあると思うけれど、既存の法制度の実社会への適応は急務の課題。
 
最近の朝青龍のサッカー問題についても、そもそも相撲はスポーツか?というところから考える必要があるし、協会による一方的な謹慎処分は朝青龍の居住・移転の自由を制限することにならないか、などなど、一般的な法解釈では判断しにくい問題がたくさんですよね。朝青龍が裁判を起こしたら勝っちゃうとは個人的には思いますが、じゃあ横綱とはいったい何なのか…。憲法民法がこうだから横綱と言えども〜なんてとうとうと述べられても、納得するのは法律に染まった人間だけでしょう。ただし、かといって朝青龍が協会にモノを言えないのもおかしい。
朝青龍問題はADRの対象にはなっていないですが、現在の紛争解決制度の欠陥を埋めるADRなどの補完的役割は、なかなかに興味をそそられる分野です。
 
(画像source:http://www.flickr.com/photos/60021253@N00/1014496150