巻物化する世の中で生きる

okapia2008-02-25

昨日のエントリ(『縦書きブログ』Feb.24, 2008)を書いた後、今の世の中も巻物化しつつあるよな、と思うようになりました。
というより、ウェブ自体が巻物の要素を多分に含んでいるから、ウェブによって刺激を受けている「こちら側」の世界も巻物化しつつあるということかもしれない。
巻物の要素とは、

・最先端に紙を継ぎ足すことでどのような変化でも永遠に内包していく。
・一つのストーリーを取り除かなくても、切り貼りすることで、途中に他のストーリーを割り込ませることができる。
・上記二つの理由から、筆者が完結した作品や世界を示すことは不可能。

といった点。これは、本や新聞の要素とは大きく異なる。
本や新聞は次々と新しいものが出てくるけれど、それは別個の世界がぽつぽつと誕生しているだけの話であって、一つの世界の中に他の世界を内包させているわけではない。そして、それぞれの世界はそれぞれの世界で自己完結した世界をつくっている。視点を変えれば、自己完結した世界というのは他の世界から切り離されているわけで、合わせて一つの世界とはなり得ない。
一方で、ウェブは変化を次々に内包していく性質をもっている。ブログに一つのエントリを書けば、コメントは付くわトラックバックはされるわ、ストーリーに終わりが無い。完結したものを示そうとしても、全方向から否応無しに変化が書き加えられる。コメント欄を付けなくたって、wwwの世界の中に存在するならばどこからでも容易にリンクが張られ、一つのストーリーは一つの世界全ての人々へと繋がる。全ての人々、とは、現存する地球66億人ではなく、未来世界を含めた、文字通り全て無限の人々に繋がるということだ。
 
変化を内包したこのような世界観は、梅田望夫さんの著書『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)』『ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)』などに詳しい。
個人的に、新著の

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

がとても楽しみ。
 
それでは、巻物化しつつあるこの世界でどう生きたらいいのか。
 
簡単。自らが巻物化すればいいのである。
 
「人生は一冊の本である」というのは耳になじんだ常套句だけれど、実際は「人生は一巻の巻物である」ということ。
自らのストーリーを切り貼りしながらその意味をたえず考え直して、自らや他人を、繋がり続ける一つの世界に存在する一員だと柔軟に捉え直し、永遠に続く予測不能な変化を内包しながら、先へ先へと恐れず進んでいく。
これを行動で示し続ければ、世界の新たな段階へも波乗りしていけるはずだ。
 
ヨハネの黙示録』にさえ、巻物が出てくるのがおもしろい。
http://www.h2.dion.ne.jp/~apo.2012/Yohane.html#%82T

第5章
 わたしはまた、御座にいますかたの右の手に、巻物があるのを見た。その内側にも外側にも字が書いてあって、七つの封印で封じてあった。
 また、ひとりの強い御使が、大声で、「その巻物を開き、封印をとくのにふさわしい者は、だれか」と呼ばわっているのを見た。
 しかし、天に地ちにも地の下にも、この巻物を開いて、それを見ることのできる者は、ひとりもいなかった。
 巻物を開いてそれを見るのにふさわしい者が見当たらないので、わたしは激しく泣いていた。
 すると、長老のひとりがわたしに言った、「泣くな。見よ、ユダ族のしし、ダビデの若枝であるかたが、勝利を得たので、その巻物を開き七つの封印を解くことができる」。
 わたしはまた、御座と四つの生き物との間、長老たちの間に、ほふられたとみえる小羊が立っているのを見た。それに七つの角と七つの目とがあった。これらの目は、全世界につかわされた、神の七つの霊である。
 小羊は進み出て、御座にいますかたの右の手から、巻物を受けとった。
 巻物を受けとった時、四つの生き物と二十四人の長老とは、おのおの、立琴と、香の満ちている金の鉢とを手に持って、小羊の前にひれ伏した。この香は聖徒の祈りである。
 彼らは新しい歌を歌って言った、「あなたこそは、その巻物を受けとり、封印を解くにふさわしいかたであります。あなたはほふられ、その血によって、神のために、あらゆる部族、国語、民族、国民の中から人々をあがない、
 わたしたちの神のために、彼らを御国の民とし、祭司となさいました。彼らは地上を支配するに至るでしょう」。
 さらに見ていると、御座と生き物と長老たちとのまわりに、多くの御使たちの声が上がるのを聞いた。その数は万の幾万倍、千の幾千倍もあって、大声で叫んでいた、「ほふられた小羊こそは、力と、富と、知恵と、勢いと、ほまれと、栄光と、さんびとを受けるにふさわしい」。
 またわたしは、天と地、地の下と海の中にあるすべてのものの言う声を聞いた、「御座にいますかたと小羊とに、さんびと、ほまれと、栄光と、権力とが、世々限りなくあるように」。
 四つの生き物はアァメンと唱え、長老たちはひれ伏して礼拝した。

人間の行く末を握っているはずの運命を神々しく暗示する不可思議な書物でさえ巻物なのだから、人間は、枠の決められた本でのようにではなく、変化を内包した巻物のように生きるべきではないだろうか。
 
(画像:http://www.flickr.com/photos/27566849@N00/398614029