『ニュー・シネマ・パラダイス(Nuovo Cinema Paradiso)』ジュゼッペ・トルナトーレ(Giuseppe Tornatore)

劇場版。

完全版。

 
劇場版は約2時間。完全版は約3時間。同じシチリアの小劇場は、二つの異なる世界を映し出す。
哀感をくゆらせたメロディーが作品全体に情緒を与えていて、噛みしめるように、ひとつひとつ昔を思い起こしながら、しっとりと話が進む。映画っていいなぁと心底実感できる二作品。
 
劇場版は完全版の短縮版ではない。登場人物や舞台のほとんどが似ていても、まるでパラレルワールドのようなまったく違う物語。見比べて、「ああ真実はそうだったのか!」とかは思ってほしくない。二つの話、二つの<真実>として味わってほしい映画です。特に、ラストシーン。別々の世界で息づく意味を、それぞれに感じ受けたい。
 
自分は劇場版の方が好きかな。
簡潔で、展開がわかりにくいところも多少あるけれど、それを補うだけの人間の絆を強く強く感じる構成。
完全版は劇場版とはジャンルが違うなぁと思う。
 
劇場版を観た後、完全版に進むのをオススメします。逆だと楽しみが半減するかもしれない。
 
感動と哀愁だけでは語り尽くせないイタリア人っぽさというか、コメディテイストをまぶした優しい映し方に心が潤います。
宣伝費だけで中身の薄い、広告屋が仕掛けただけのような映画が目立つ今日この頃。こうしてきらめく作品に出会えたことに、感謝したいと思います。
 
にしても、劇場版と完全版、二つのバージョンが誕生した裏側には驚いた。
さすがイタリアというか、すてきな意味でアホだなぁと思った(笑)二作品を見終わった後、完全版に収録されている監督インタビューで詳細を確認してみてください。衝撃!
 
サントラ。

 
人の生き方って、むつかしい…。