『ルナシー(Šílení)』ヤン・シュヴァンクマイエル(Jan Švankmajer)

ヤン・シュヴァンクマイエル「ルナシー」 [DVD]

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自由、狂気、権力、人間……映画を観終わった後に頭に浮かぶフレーズは枚挙に暇がない。テーマ性に満ちているというか、つくづく考えさせてくれる作品。<自由>とは何か、なんてちらり考え始めた時点で、もうすっかり不自由な頭。この葛藤や如何に。
 
この映画はエドガー・アラン・ポーマルキ・ド・サドの世界観に満ちています。
まったくの偶然ですが、映画を観る前日にポーの「早すぎた埋葬」を読んでいました!自分の好きな小川高義氏翻訳だったせいもあってか、ポーの世界描画にぐいぐいと惹きつけられました。

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)

前知識無しに映画を見始めたので、あれ?何かに似てる…とは思いながら…そっか、オマージュか!
侯爵の狂気にすんなりとけこめて、嬉しかったです。ポーもオススメ。
 
自由と権力との関係は、政治学の根本にある難しい議論ですね。

「フリーダム; freedom」と「リバティ; liberty」は、ともに自由と訳される。現在、この2つの語はほぼ同じ意味で用いられるが、その意味合いは微妙に異なっている。
フリーは古英語の frēo に由来し、束縛や拘束がなく義務を免除された状態、すなわち自由の消極的側面 (しなくてよい)が強調される。一方リバティはラテン語の libertas が語源であり、選択や行動・発言の権利が保障された状態、つまり積極的側面(してよろしい)に比重が置かれる。

 
誰かを信じて誰かを疑って。自分自身を手放しで信じられるなら、そんな幸せなことはない。
<狂気>が何よりも恐ろしく最も美しい理由は、誰一人にさえも<真実>がわからないところにあります。