『こころ』夏目漱石

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

 
忘れたくないことを書きたい、と以前から述べている以上、ここには載せておきたい大事な作品。
読むたびに読後感が異なっていて、正直、感想が書けない。人間の葛藤が云々…とか、通り一遍の書評を綴っても、余計に安っぽく感じるだろう。だから書かないし、書けない。
読書は他者との対話でもあるし、現在の自分との会話でもある。鏡は鏡であるのに、映りこむ像はさまざま。
 
唯一未だに信じられないのは、この作品を夏目漱石は新聞連載で書き上げたというところ。締切りに思考を細切れにされながら、目を見張るほどに圧倒的な筆さばき。あの著名な夏目漱石の心の底を強く激しく抉るように流れていた想いの欠片を感じ取るためだけでも、一冊読む甲斐がある。